クリス・インペリテリといえば速弾きギタリストとして有名な人である。
彼の速弾きに対してよく「いつも同じ」と言う人がいるのが、時代によって使うパターンは違っているのが実情。
しかし特に日本で人気だった1990年代中盤から2000年代前半が似たようなパターンが多かった為にそういう印象があるのだろう。
王道なハードロック/ヘヴィメタルを愛する人にとってこの時期の楽曲がツボにハマる良質なもの連発(つまりは王道から出ない)だったこともあって、より人々にワンパターンな印象があるのだと思う。
そんな訳でこの時期の代表的な作品であり、王道のHR/HMチューンが満載のAnswer To The MasterとScreaming Symphonyで何か法則があるのか調べてみた。
今回調べたのは多くの人がワンパターンというギターソロ冒頭に出てくるような速弾きのライン。
大きく分けて2パターンある。
タイプA
短い上昇からスケールの下降に移るパターン。ちなみに曲によっては最初の上昇がレガート入りだったり、音階を少し飛ばしたように聞こえる(この例で言うとA, B, Cの後にF, E, Dみたいな)時もあるが、とにかく最初から下がるのと区別する意味でそういうパターンの場合もタイプAとしておく。
タイプD
最初の音から下降するパターン。 名前は勝手につけた。要するに上昇してから下降か、ストレートに下降かの違いでパターンA/Dとしている。
これを使ってAnswer To The MasterとScreaming Symphonyに出てくる楽曲を比べてみた。
何かしらの法則があるのではないか?と
以下に調べた結果を書く。
Answer To The Master
The Future Is Black
タイプA
典型的なタイプAである。Fly Away
どちらもない
この曲はインペリテリの曲の中でも珍しいギターソロと言えるかもしれない。
しかしギターソロ最初のアルペジオをオルタネイトを弾き切ったり、その後のペンタトニックは時折見せるインペリテリ流ブルージー/ロックと言えるし、今となってはこの時期にこのソロは貴重と思えるソロ。Warrior
これもタイプA
後半ではスキッピングのアルペジオがある。
このアルペジオ考察はまた今度記事にします。I'll Wait
バラードなので典型的なインペリテリ曲ではないのだが、速弾きも出てくる。
これは実際のところタイプAでもDでもないのだが、変形したタイプDと言ってもいいと思う。Hold the Line
タイプA
この曲はソロ前にチキンピッキングのフレーズがあったり、ソロもフルピッキングに始まり、典型的なスキッピング+タップのフレーズありでギタープレイ的には派手。Something's Wrong with the World Today
この曲はどちらのパターンもない。Answer to the Master
典型的なインペリテリソングでタイプAから入る。
ソロ全編でハーモニーなのはインプロ派のイングヴェイにはない訳で、完璧主義なクリスはイングヴェイとは全然違う存在ということだ。Hungry Days
タイプAが使われている。ギターキッズが喜びそうな曲だ。The King Is Rising
タイプAで入る速弾きが3回も出てくる。バンドサウンド志向のクリスにしては珍しいソロのサイズかも。
ということで、、、意外にも?Answer To The Masterでは純粋なタイプDが使われていないのだった。
なるほど……こういうのを聴いてワンパターンと思う人がいたのかな。
さて、次のアルバムScreaming Symphonyを見てみよう。これは殆どの曲のテンポが統一されているというメタラーとしては燃えるアルバムだが、そうでない人からすると「同じ曲が連続している」という印象を受けそうなアルバムでもある。
ちなみに私はこういうアルバムが好き。そのジャンルの魅力を最大限まで表現しているという感じ。
Screaming Symphony
Father Forgive Them
すぐに低音側にいかないので典型的なタイプDではないが、タイプDと言っていいだろう。I'll Be With You
典型的タイプDWalk Away
タイプDKingdom Of Light
ソロ冒頭は高音域ではなく、ソロとしては低音域でのハーモニーなのでどちらでもないのだが、その後にタイプA的なラインが出てくる。Countdown To The Revolution
ソロ締めの速弾きがタイプA17th Century Chicken Pickin
タイプARat Race
ギターソロはKingdowm Of Lightのように低音域から入り、最後までどちらのパターンも出てこないが、イントロでタイプAが入る。For Your Love
ギターソロの導入部でタイプD。
そしてソロ締めの速弾きがタイプAというパターン。You Are The Fire
タイプA
Screaming Symphonyは特に前半の4曲の畳みかけが凄いが、そのうちの3曲のソロの入りが似たパターンと言える。
つまりテンポの統一にリフも似ていたり、ソロの最初も似たようなパターンが使われているのもあって、同じような曲が連続する印象を受けるのではないかと。
なんか使い分けあるのか?
結論として、私には分からなかったというのが正直なところ。
むしろ、Answer To The MasterではタイプDがない(近いものはあるが)が聴きなおしてみると意外な点だった。
さて、Answer To The MasterとScreaming Symphonyを聴きなおしてみた時に改めて思ったのはアルペジオのアプローチの違いである。
ということで今度はアルペジオについて考察していきたいと思う。
余談
今回のを調べてふと気になったのでAnswer ~の前のミニアルバムであるVictim Of The Systemはどうなんだろうとまた聴きなおしてみた。
すると速弾き部分はタイプAなのだが、曲がそれぞれカラーが違ってそれに合わせてギターソロも構築されているのでワンパターン感は感じなかった。
こういうミニアルバムの方が魅力的に思う人も沢山いそうな気が……